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日本人の脾と湿

2018-06-16
梅雨の時期になり訴えが多くなる症状には、倦怠感や消化管症状、むくみ、めまいや耳鳴りといったものがある。とくに、倦怠感に関しては、近年“夏バテ”ならぬ“梅雨バテ”という言葉も出てきたようだ。梅雨はもはや多くの日本人において代表的な“体調不良になりやすい時期”となっているのかもしれない。
 
梅雨の時期に現れやすい症状の多くには“湿邪”が絡んでいる。湿気、すなわち“湿”が強くなりすぎて身体に害をあたえる“邪気”になったものが“湿邪”である。身体の中に溜まって停滞した湿気が身体に害を与える。水はけの悪い土壌にある水たまりがよどみ、腐っていくようなものである。流れる水は腐らず、という。体内の水分を停滞させずに流すことは、健全な身体を維持することに必要不可欠である。
 
身体の中の水分をうまく流すためには脾が大きく関わってくる。“脾”は東洋医学においての五臓のひとつである。「脾は運化をつかさどる」とされている。脾がその働きを十分に発揮することで体内の水液はうまく巡る。脾にできるだけ負担をかけすぎないことが湿邪による体調不良を防ぐことに繋がる。
 
湿には大きく分けて身体の外部環境からの外湿と、身体の中から生み出される内湿に分けられる。内湿は、主に脾の機能が低下することで身体の内側から生じる。内湿は、脾が健全に水液を運化できなくなり、水湿停滞して凝集した状態である。外湿と内涅は異なるが、湿邪となり発病する機構においては相互に影響する。東洋医学では「内湿が外湿を呼ぶ」という。脾が機能低下すると内湿が生じるとともに外湿を感受しやすくなり、外湿が侵入すると脾を傷害して内湿を産生しやすくなる悪循環となってしまう。
 
脾の負担を抑え、その機能を損ねないようにするには、水分の取りすぎに注意し食べ過ぎや飲み過ぎを避ける、あっさりしたものを摂り油ものの摂取を少なくする、などの方法があげられる。また、暑くなってくるとアイスをはじめ冷たいものを多く摂ってしまいがちである。冷たいものは脾の陽気を傷つけ消化能力を低下させてしまうので、これも注意が必要である。
 
中医学では「脾は湿を嫌う」とされている。日本の梅雨、夏は高温多湿である。島国である日本は、四方を海に囲まれており湿気が多い。そのため、日本人は湿に対し過酷な環境にもともと置かれているのだと思う。そして、日本人は胃潰瘍をはじめとし消化管の症状が多い民族と言われている。このあたりにも湿と日本人との関連性があるように思う。“湿”対策は日本人の健康に大きく関わっているのかもしれない。
 
投稿者:古賀巌
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