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腸と脳のセロトニン

2018-01-31
小腸では体内セロトニンの約90%が作られ、保有されています。腸内のセロトニンは腸の運動と密接に関連しています。セロトニンはテレビや雑誌などでは幸せホルモンなどとよく言われています。ただし、腸内のセロトニンは直接脳に入り働くわけではありません。脳には血液脳関門という門番があり、簡単には通過できないのです。脳内のセロトニンはイライラ、不安感などが過剰にならないよう抑制し、精神を安定化させます。そのため、俗にいう幸せホルモンとは脳内で働くセロトニンのことを指すのでしょう。脳内セロトニンの量が不足すると、精神が不安定化し、すぐに怒りやすくなったり、うつになったりします。セロトニンはトリプトファンという必須アミノ酸やビタミン類を使って合成されます。腸内のセロトニンは脳内に補填できない一方で、脳内でのセロトニンの原料であるトリプトファンやビタミン類は腸で食べ物より取り出されています。腸内フローラ=腸内細菌叢は食べ物から腸が栄養を吸収する部分で、密接な関わりがあることが分かってきています。腸内細菌によって食べ物がしっかりと吸収すべき栄養素へと分解・合成されており、このセロトニンの原料を取り出す作業も行っているのです。腸内フローラが正常に機能すれば脳内、腸内のセロトニンの量も正常に保たれることが明らかになって来ました。腸内環境を整え、腸内フローラを活用することは脳の機能を整える事にも繋がっているようです。いわば身体と腸内細菌は共生しており、腸が第二の脳と言われる所以なのでしょう。

腸管免疫系は体外と体内の境目で見張っている

2018-01-24
最近は「腸活」といった言葉がトレンドとなっています。腸活とは腸内環境を正常にして健康な体を手に入れることを言います。近年になり、食べ物の消化吸収だけでない、腸の様々な働きが注目されています。たとえば、免疫において腸管が非常に重要な存在であることが注目されています。腸は腸管免疫系と呼ばれる免疫機構を構築し免疫機能に関与しています。腸管免疫系について簡単に調べてみました。
腸管免疫系はパイエル板、小腸上皮細胞、粘膜固有層と腸間膜リンパ節によって構成されています。腸管の表面積はテニスコート1面分にも達し、体表面積の100倍以上であると推定されています。腸管は内臓器官ですが、その両端に位置する口腔と肛門を介して外界と接しています。従って、腸管は内なる外界ともいえ、腸管粘膜は、細菌、ウイルス、寄生虫や化学物質などのさまざまな異物に絶えず曝されています。それら経口的に体内に入る脅威から身を守るために発達した仕組みが腸管免疫系であり、これに対応する免疫系細胞も大量に存在する必要があります。
一方、私たちの身体は、生命を維持するため必要な食べ物を分解し体内に取り込んでいかなければなりません。腸管免疫系は食品のように安全なものと、病原細菌のように病原性のあるものを識別しています。生命の危険にさらされる病原細菌も、その成分は食べ物と同様にたんぱく質、炭水化物、脂質からつくられています。これを食べ物などと判別し、排除しています。すなわち、腸管免疫系は身体の外部から身体の内部に入れるべきものを識別しているといえます。
腸管免疫系は全免疫系細胞の約70%が存在しているといわれ、体内の最大の免疫機構です。身体の内部へ外部から敵が入り込まないように、これだけの戦力が見張っているのです。身体自身も、敵が内部に侵入し暴れることで致命的な損害を被ることをあらかじめ防ぐこと=予防が大切だと言っているのかもしれません。

大寒の養生 防風防寒と温める食べ物を

2018-01-20
本日1月20日は二十四節季の「大寒」です。「冷ゆることの至りて甚だしきときなれば也」。大きく寒いと書くことからも分かるとおり、一年で最も寒さが厳しくなる時期とされています。
養生については、中国では古くから「大寒大寒、防風防寒、朝に人参、黄芪の酒を飲んで、夜に杞菊地黄丸を飲む」といいます。大寒期間は、風邪など気道の伝染性疾病が増える時期なので、寒気を吹き飛ばす温の性質をもつ食物をとり、風寒邪気の侵入を防ぐべきです。ふさわしい食物は紫蘇の葉、生姜、長ネギ、唐辛子、花椒、桂皮など。風寒とは、風と寒さ、風が吹いて寒いことを表します。
この時期の厳しい寒さから身を守るためには、「首」を温めることも重要です。首には太い血管やリンパ、上神経節、中神経節などの重要な器官が集中しています。それらは首では薄い皮膚にのみ守られているだけです。ここで血液が冷やされてしまうと、その冷えは身体全体に影響を与えてしまいます。特に首から肩の後ろには風門という風邪の入り口があります。首はしっかりとマフラーなどで風寒を防ぎます。手首や足首といった首という文字が付く個所も同様に皮膚が薄く血液が冷やされてしまいやすい箇所なので、手袋や厚手の靴下などで防風防寒を徹底しましょう。
大寒の次は立春です。大寒を過ぎればかすかに大地に春が戻ってきた景色を感じとることができます。

インフルエンザの基本的な予防 免疫の働き

2018-01-16
年始も2週間を過ぎ、慌ただしい日々も少し落ち着いてきたでしょうか。学生さんは受験シーズンも本格化し、追い込みに追われているかもしれませんが、受験当日に体調を崩さないよう、体調管理についても気を配っているかと思います。インフルエンザの予防では予防接種やマスクの着用が優先されがちですが、普段から闘う兵士の質や対抗するための武器(抗体)を速やかに作る能力を高めておくことです。その為には疲れを残さない、睡眠をしっかりとるという基本的なメンテナンスを忘れてはいけません。
身体の中で増えたウイルスに対処するのは我々の身体が持つ免疫です。我々の体は主に自然免疫と獲得免疫の2つの免疫の働きによって、インフルエンザウイルスなどの外部の敵から守られています。自然免疫とは、体内にあるマクロファージや好中球などの免疫細胞が体内に侵入してきた菌やウイルスなどの外敵を食べて消化することです。一方、獲得免疫とは「抗体」を使う免疫反応のことです。マクロファージがインフルエンザウイルスを食べると、ウイルスの情報がT細胞、そしてB細胞へと伝えられ、B細胞は食べられたインフルエンザウイルスに適した武器、抗体を作り出すようになります。侵入者を分析し、撃退するのに適した武器を開発し戦線に投入するといったイメージです。抗体を使えば、以前に感染したインフルエンザウイルスは撃退することになります。自然免疫が素手での白兵戦とすると獲得免疫は武器を使って後顧の憂いなく敵を打ち破る殲滅戦というところでしょうか。
疲労がたまっている方、睡眠不足の方は身体を守る衛兵も疲労しその働きを十分に発揮できず、免疫の力が落ちており、それだけでインフルエンザウイルスへの抵抗力が下がっています。兵士の疲労や士気に気を配らなければ良い司令官とは言えません。身体の疲れ、救援要請には敏感になるべきです。

インフルエンザが注意報レベルになりました

2018-01-12
先週末には各地でインフルエンザ注意報レベルを超えたそうで、いよいよインフルエンザの流行期に入ったようです。学校も冬休み期間が終わり、一気に広がりを見せる可能性があります。当薬局でもちらほらと抗インフルエンザ薬の処方箋をお持ちになる方が見えられるようになりました。
インフルエンザはインフルエンザウイルスが原因となり高熱や関節痛なども引き起こします。インフルエンザウイルスの増殖を抑え、インフルエンザ感染症の治療や予防をする薬を抗インフルエンザ薬といい、病院で処方されます。インフルエンザの疑いがあるときは早急に病院に行き、抗インフルエンザ薬をもらうといった流れは近年常識になりました。
抗インフルエンザ薬はタミフルやリレンザ、イナビルといった医薬品があります。インフルエンザウイルスは細胞内へ侵入後、ウイルスが大量に作られ細胞外へ放出される過程を繰り返し増殖しますが、これら抗インフルエンザ薬はインフルエンザウイルスに感染した細胞からウイルスが放出されるのを阻害しウイルスの増殖を防ぐ作用を持っています。
抗インフルエンザ薬はウイルスを殺すのではありません。あくまでウイルスの増殖を食い止める薬になります。インフルエンザウイルスは猛烈な勢いで増え続けて、症状が出てから2~3日後(48~72時間後)には最も数が多くなります。そのため、罹患後48時間を超え、ウイルスが増え切った状況で服用してもあまり意味がないのです。
インフルエンザには重症化しやすいハイリスク患者層があります。誤解のないように言いますが、抗インフルエンザ薬は服用すること、予防接種を受けることで、インフルエンザの感染や重症化を防ぐ可能性は高まります。
忘れてはいけないのは、ウイルスを撃退、殲滅するのは自分自身の身体のもつ免疫の力であるということです。「ワクチン打ったから大丈夫」「抗インフルエンザ薬を飲んだから治るだろう」ではなくて、身体の中の細胞がそのウイルスを撃滅する力を最大限発揮できるように、十分な睡眠や正しい食事で後方支援をして戦況を整えてあげることが、早く症状を治めるためには必要です。敵(ウイルス)の侵入を抑えること、身体を守る兵士たち(免疫細胞)を万全の状況に整えておくことが予防であり、敵に勝つための戦略です。
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